ネイバーフッド アソシエーション(ポートランド視察報告7)

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5/11(木)NETミーティングに続き、19時から「バックマン ネイバーフッド アソシエーション(Buckman Neighborhood Association)」の月例会を傍聴しました。

場所は同施設内にあるマルトノマ郡議会の議場内にある小部屋です。ネイバーフッドアソシエーション(以下「NA」と略)がオーソライズされた組織であることがうかがえます。

「NA」は日本の自治会連合会に近い組織に見えますが、様子は全く異なります。

私が知っている自治会の会議では、報告事項や行政の業務代行の伝達事項が多いのに対し、ここはまるで議会のような議論が行われていました。

役員は15人ほどと聞いていましたが、提案者や一般参加者も同じテーブルを囲んでおり、はっきりわかりませんでした。

会議室のホワイトボードに会議テーマが書かれており、当日のテーマは、①治安問題、②学校債の発行とプール問題、③近隣の「NA」からの治安維持活動への協力、④駐車許可証など10項目でした。

私たちは1時間ほど滞在しテーマ③まで傍聴して退席しましたが、後日聞いた話では議論百出で半分までしか議論が進まなかったとのこと。その一端は③までの議論を聴いていて十分うかがえました。

①は地元警察との意見交換で定例的に行われているテーマのようです。犯罪の発生状況やホームレス対策などについて、現状報告を受け住民側の意見を伝えていました。

②はポートランド市が「学校債発行の賛否を問う住民投票」を翌週実施するにあたり、賛同を得るためにポートランド市教育局職員が住民説明に来たものです。

この議論の中で「住民参加」の一端を強烈に体験しました。

ポートランド市の住民投票制度そのものはよくわからないですが、日本では議決事項である「起債」が住民投票ということにまず驚きました。

ポートランドをはじめ米国は「小さな政府」を志向しているため常に「おカネが無い」とのことです。

住民投票の提案は、バックマン地区の学校は築後77年を超えており、その他の地区の老朽校舎を含め建て替えが必要なため学校債を発行するというものです。

この提案に対し住民からは、容赦ない質問が当局に浴びせられました。

建て替えに関するそもそもの議論のほか、質疑は付随した課題である「学校用地の売却」におよび、跡地利用についてもっと住民の声を聴くべきだという意見が出され、当局に再考を約束させていました。「NA」でここまでの議論をやるとは、まさに住民参画の仕組みが機能していると感じました。

ちなみに帰国後の連絡で住民投票は可決されたとのこと。

またプール問題はプールの水が塗料に含まれている鉛で汚染されたというもので、この点についても管理状況に対し厳しい意見が出されていました。

③は、バックマン地区の近隣にある富裕層が多く住む「NA」が、市にホームレス対策を要望するにあたり、周辺「NA」の賛同を得て進めていこうという趣旨で、年配の落ち着きある男性がバックマン「NA」に説明に来たものです。

この提案に対し20代前半と思える若い女性から「あなたがたの言っていることは理想論で、もっと現実的な活動をやるべき。私たちはすでにやっている」との意見が出されました。

老若男女を問わず誰もが自らの主張をキッチリ述べる風土(民主主義に対する文化)が強烈に印象に残りました。

こうした住民の参画意識とPDCのような行政の仕組みがマッチして、ポートランドのまちづくりが進められていることの一端を垣間見ることができたように思います。

本県にこの仕組みをスグに導入できるとは考えられませんが、人口減少、財政が厳しくなる中で、住民参加は不可欠です。将来をみすえ、バックキャスティングで今何をすべきか考えていきます。