東川スタイル

昨日、静岡県議会 多文化共生推進特別委員会で北海道東川町を視察しました。
東川町の令和元年7/31時点の人口は8352人、うち外国人355人、外国人比率は4.25%となっています。
この小さな町の取り組みはグローバル時代の共生社会の先進モデルと言えそうです。

東川町は旭川市の隣にある農業林業を主要産業とする町。近くには富良野や美瑛など有名な観光地がありますが、東川町にはコレといった“売り”はありません。

そんな中、素朴な自然環境を活かし1985年「写真の町」を掲げました。
川勝知事が「文化力」という言葉をよく使いますが、まさに産業ではなく写真文化による町づくりを進めています。
今では全国各地から高校生が集まる「写真甲子園」を開催するほか、「高校生国際交流写真フェスティバル(東川ユースフェス)」という国際イベントも開催しています。

東川町の人口は戦後のピーク時に1万人を超えていましたが1993年には7千人を切りました。
その後、宅地造成や景観対策を進め、さらに近年は移住定住や関係人口増に力を入れており、人口増加につなげています。夜間人口より昼間人口が多いというのも特徴です。

東川町の多文化共生のカギとなるのが「町立日本語学校」と「旭川福祉専門学校」です。

東川町は、2009年、当時生徒減という課題を抱えていた「旭川福祉専門学校」の寮や教室の空きスペースを活用し、72人の韓国人を受け入れ、1~3ヵ月の日本語・日本文化研修事業をスタートしました。
その後、台湾、中国、タイ、ベトナム、ウズベキスタン、インドネシアなど対象国は拡大し、昨年度は474人を受け入れ、累計では2760人を超えています。

「旭川福祉専門学校」を運営する学校法人北工学園は1972年に専門学校事業を始め、時代のニーズに沿った専門領域の事業を進めていましたが、近年事業の選択と集中を進め、当初からあった「こども学科」、1992年にスタートした「介護福祉科」に加え、2012年「医療福祉学科」、2013年に「日本語学科」を設置しました。
2014年の日本語学科はタイ3人、台湾1人を迎えスタート。現在、2年コースと1年半コース合わせて131人となっています。
また「介護福祉科」にも外国人学生が学んでおり、82人中31人の外国人が在籍しています。この中には「日本語学科」を卒業したあと、引き続き学んでいる学生が13人います。

近隣の7自治体で「外国人介護人材育成支援協議会」を設置し、介護人材の育成を支援しているとのことで、外国人受け入れによる学校経営改善と不足する介護人材の育成を両立させ、ウィンウィンの関係を作っています。

さらに上記の短期(1~3ヵ月)と専門学校(1.5~2年)の間を埋める外国人受け入れ事業として、2015年に6ヵ月コースと1年コースの日本語教育を行う「町立日本語学校」を開設しました。
せんとぴゅあと名付けられた施設は、旧東川小学校の校舎を再利用したもので、公立の日本語学校は全国でここだけです。
今年の外国人学生は6ヵ月コース33人、1年コース25人とのこと。
学費は6ヵ月コース40万円、1年コース80万円となっていますが、奨学金制度を設けており半額を町が交付しています。また寮費の補助や町内で使える月額8000円のポイントを付与するなど学生の生活をサポート。さらに施設内にワンストップサービスを行う「多文化共生室」を設置しています。
町の持ち出しが多いのかな…と思いましたが、日本語講師として「地域おこし協力隊」に活躍してもらうほか、国の特別交付税の活用や「東川株主制度(ふるさと納税)」を活用するなどさまざまなアイデアで財政負担を減らし、留学生の生活費などによる経済効果を含め、町財政に貢献しているようです。

ちなみに、学校法人北工学園の理事長は元北海道副知事さん、未来をみすえ昨年からこの取り組みに関わっているとのこと。お会いできなかった町長さんを含め、もう少しじっくりお話を聞いてみたかったですね。

ちなみにタイトルの「東川スタイル」は東川町の魅力を綴った本のタイトル。著者は地方自治に詳しい慶應義塾大学総合政策学部の玉村雅敏教授などです。

さて、静岡県にいかに反映していきますかね…