シリコンバレーの「場の力」(アメリカ視察3)

シリコンバレー訪問は私にとって今回の視察のメインテーマでした。

スタンフォード大学を中心とした豊富な人材群や、ベンチャー企業を育成し世界的なIT関連企業を輩出するダイナミックな「場の力」を体感するとともに、「デザイン思考(Design Thinking)」の現場を見聞きし、これからの本県の産業や地域づくりに活かすことを大きなミッションと考えていました。
シリコンバレーでは、スタンフォード大学の池野文昭先生にコーディネートしていただき、県が次世代産業として育成を目指している医療関連の動向について話を聞いてきました。
池野先生は高塚町で生まれ育ち佐久間病院での勤務経験を持つ医師で研究者。スタンフォード大学では“バイオデザイン”という新たな仕組みづくりを進めています。
日本の医療機器や製薬業界の現状を客観的にお話しいただきましたが、海外に大きく後れを取っており、国内市場はほぼ輸入に頼っている状態が理解できました。これらを国産化できれば国にとって大きなメリットがあります。

またインキュベーター2社を訪問させていただきました。

高い技術力で医療機器開発を支援しているインキュベーター「Triple Ring Technologies, Inc.」にはアメリカ各地のスタートアップはもちろん、大企業も相談に来るとのこと。「人・場所・技術」をつないでいました。

病院内にあるインキュベーター「Fogarty Institute for Innovation」には、現場ニーズからの医療機器の開発を進める全米各地のスタートアップの他、日本企業も進出し、デザイン思考で医療機器づくりを進めていました。スピードや現場感覚が日本と全く違うとのお話でした。

静岡県がファルマバレー構想をスタートしたのは2001年。静岡がんセンターを中心に、大学研究機関や企業を巻き込んで、医療健康産業の集積を進めており、静岡県が医療機器や製薬で全国一の規模を誇ることはファルマバレープロジェクトの効果と言えます。

しかし、世界を見渡すと、日本の医療機器や製薬の開発スピードは遅く、シェアも低いということで、こうした現状を踏まえると、さらにスピード感を持って医工連携を進めていく必要があります。

静岡がんセンターとファルマバレーセンターの連携をさらに一歩進め、FIIのように現場に入り込んだ仕組みとし、現場ニーズをスピーディにまた定量的に把握すべきであり、またTRTのようなラボ機能を充実させることで、人材ネットワークや研究者が集う場を作り、新たなイノベーションを起こす場としてファルマバレープロジェクトのステップアップを図るべきではないかと感じました。現状に満足することなく、シリコンバレーをベンチマークに置き、常に改革改善に取り組むべき・・・そんな思いを強くした視察調査でした。
なお、静岡県からはスタンフォード大学に研究員として職員を派遣しています。シリコンバレー流の「デザイン思考」の行政への導入を研究しているとのことでした。西芝先生のCBLにも通じる考えであり、今後に期待します。
写真はスタンフォード大学。広大でキレイなキャンパスでした。