京都丹後鉄道
平成27年度から「上下分離」による経営を進めている京都丹後鉄道を視察しました。
「上下分離」は、線路などの施設(下)を自治体や3セクが保有したまま、運行・運営(上)を別の事業体が行うものです。
一般的に、道路や空港、港湾等のインフラは行政が整備し、民間事業者が利用していますが、鉄道に関しては事業者がインフラを整備するのが当たり前です。不思議ですね。
京都丹後鉄道では、施設・車両・用地(下)は従来から運営していた3セクの 北近畿タンゴ鉄道(株)が保有し、運行(上)を民間事業者が担っています。今回は(上)を行っている WILLER TRAINS(株)の話を聞きました。
WILLER TRAINS(株)の親会社は、高速バスの運行等を主な事業とするWILLER(株)。同社が持つ交通事業者としてのノウハウと、IT・マーケティング戦略を活かした事業を行っています。
同社の応募理由は「公共交通を通じた地域経済への貢献」。地方創生、地域活性化を提案し、採用されたとのこと。
事業スキームは、乗客から料金を収受し、社員の人件費と基盤施設使用料を(下)に支払うのが基本。一方、(下)は施設・車両の維持修繕を(上)に委託し、委託料を支払っています。
私鉄各社が鉄道以外の事業で収益を上げていることを例に挙げ、地域住民のまちづくりと連携することで、地域の価値を高めることを主眼にしています。
3本柱は、①バス事業者などと連携した公共交通ネットワーク、②若者の働く場の創造、③交通まちづくりを目指す学生の教育の場を想像、とのこと。
観光客を楽しませる車両の運行(写真…私も乗りました)のほか、各種イベントや地域住民を巻き込んだ取り組みの実施、さらに沿線市町の協力で小学生向けに「こども新聞」を年4回配布、京都府などの協力も得る中でインバウンドにも力を入れています。
経営的には、3年にわたり人材を積極的に採用していることで、人件費負担が大きくなっているとのことでしたが、自前の人材育成を積極的に進めているようです。
社長からは、「3セク鉄道の維持は、上下分離といった方法論でなく、存続させなければいけないという地域住民の覚悟が必要」というのが印象的でした。
本県においても3セク鉄道である天浜線の経営健全化は急務です。すでに事実上“上下分離”に近い財政負担を行っていますが、運営面でさらなる工夫が必要です。今回はいろんなヒントをいただきました。
特に地域住民を巻き込んだ取り組みが必要で、地域公共交通のそもそもの役割を住民が主体的に考えていく必要がありそうです。
京都丹後鉄道の募集では、鉄道事業者からの応募はなかったといいます。仮に天浜線を上下分離し運行事業者を募集しても簡単ではないと思いますが、民間ができることを行政ができないと諦めてはいけません。さらなる活性化チャレンジが必要です。