老朽化する社会資本

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東京で行われたセミナー「老朽化する社会資本ー再生の基本戦略」に参加しました。

基調講演は東京都市大学の中村学長。
1970年代のアメリカは、今の日本と同じ状況だったとのこと。
ニューディール政策により造られた多くのインフラが一度に老朽化したものの、ベトナム戦争による財政難で更新できなかったということです。
まさに「歴史は繰り返す」ですね。

講師からは、まず「資産台帳の整備」と「電子カルテ化」、そして「組織や人材の体制整備」「検査体制」「新技術」「代替施設の検証」、最後に「財源」の話がありました。どれをとっても課題山積ですね。

さてこの問題は、道路や橋のようなインフラ施設と学校や公民館のような公共施設に分けて考える必要があります。

前者は「アセット・マネジメント」、後者は「ファシリティ・マネジメント」です。

いったん造ったインフラはなかなかヤメるわけにいきません。先日の水窪の「吊り橋」は撤去したようですが、こういうケースは稀でしょう。少ないとはいえ利用者がいる限り道路や橋を無くすというのは、なかなか難しいことです。
この場合は、長寿命化を図るとともに管理コストの低減に取り組むのが先決です。
上下水道なら、浜松市のように部門を一体化するとか、近隣の市町で共同管理するとかの工夫が求められます。

静岡県では公共施設の維持更新負担はおおよそ試算されていますが、インフラについては示されていません。
まずは現状把握が必要です。

「ファシリティ・マネジメント」については、「いかに廃止するか」を考える時にきています。同じような機能を持つ施設の統廃合、共同利用など、これまでの「あって当たり前」という考え方を改めていく必要があります。

パネリストからは「首長や議員に中長期的な視点が欠けており、何かを造ることで有権者の歓心を買うことばかりやってきた」と厳しく指摘されました。
そういうこともあったんでしょうね…。

さて今回課題として提起されたのは、「人的資源の不足」と「将来展望のなさ」でした。

前者は「技術系職員の育成」と「民間活力の導入」、「外部委託の適正化」などが指摘されました。
特に、インフラや施設の新規事業の企画に比べ、維持管理というのは地味な仕事です。
しかしこれからは、こっちの方が優先度が高いわけですから、人事制度上、モチベーションを高める仕組みも考える必要がありそうです。

「将来展望」については、これまでのやり方に加えて、地域住民を巻き込んで意思決定する仕組みが提起されました。

「あれもこれも」の時代から「あれかこれか」になり、さらには「統廃合」「縮小」まで視野に入れて取り組まねばなりません。

特に財政について、財源がないというのをいかに共有化するかが大事だと思います。適切な情報公開と合意形成が求められています。

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