篠原地区野球場整備への考え

激論が戦わされた「篠原地区への野球場整備事業」。最大会派が提出した減額修正案が建設委員会で可決されました。

減額内容は次のとおりです。

○事業目的

遠州灘海浜公園(篠原地区)の公園基本計画図の作成

○事業概要

・野球場も含めた公園施設基本計画図の作成 4800万円→0円

・周辺道路及び公園内の交通処理、交通アクセスの検討 1580万円→0円

・津波浸水想定、地盤の液状化対策の検討 830万円→0円

・公園基本計画策定に必要な測量・地質調査 2490万円→2490万円 

ちょっと長くなりますが、わが会派の高田泰久議員が行った委員会での討論と私の考えを記載します。

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◆3/10建設委員会での討論

そもそも野球場整備は、昭和49年度に遠州灘海浜公園が都市計画決定された後、平成5年度から毎年度、篠原地区への公園整備について浜松市から要望が出されていました。

そして平成20年度からは、「球技場などを主体としたスポーツ施設」と要望内容が絞り込まれ、さらに平成23年度に「野球場」という言葉が登場し、平成25年5月21日には浜松市と浜松商工会議所、浜松市自治会連合会の3者が一体となって、「県営野球場」整備の要望書が公式に提出され、今日に至っているわけです。

これまで本件については、県議会の本会議や委員会の場において、自民改革会議の鈴木洋祐議員とわが会派の田口章議員が整備推進の立場で質問や意見を述べてきたほか、昨年9月議会までは何の疑念もなく推進されてきたものです。

また昨年2月定例会の平成27年度一般会計予算審議では、今年度の基本構想策定予算3000万円を満場一致で可決したところであり、順調に行けば、今後は次のステップに進んでいくものと考えておりました。

この度、修正案が提出され、その理由として、「合意形成、防災機能、完成時期」の大きく3点を挙げていますが、私たちはこの点について、以下のように考えています。

まず、合意形成については、先述の通り何十年にもわたる要望を踏まえた上で、80万市民の負託を受けた鈴木康友市長が、公式な手続きとして自治会連合会や経済界とともに要望を出されているわけで、これは多くの浜松市民の想いであると受け止めるのが素直だと考えます。

こうした経緯から、県は、浜松市との公式な勉強会での意見を当然信頼し、今回の予算案を提案したものであり、コンセンサスが得られていないとまでは言い切れないと考えます。

もちろん、県は県民の合意を得る努力を惜しんではいけませんし、常に最大限努力すべきです。したがって一部関係者の中で合意が得られていないとすれば、今後丁寧に説明をし、理解を得ていくことは必要だと考えます。

さらに、浜松市民の合意形成を行うのは、一義的に浜松市の役割です。浜松市におかれましては、このような混乱を招いた責任を痛感して頂くとともに、今後、県以上に丁寧かつ真摯に説明をしていく責務があると指摘しておきたいと思います。

次に、防災機能についてですが、先日の浜松市議会での浜松市長の答弁の一部でしかない「防災機能として特別なものはいらない」という部分を提案理由に挙げています。

しかし実際には、その前段で「県に対しましては、防災機能を発揮する野球場整備を要望しておりますが、例えば、スタンドを緊急避難場所として使用する、階段下のデッドスペースを物資備蓄に使用するなど、本来野球場としてもつ機能の一部を活用することを想定しています。」と答弁されており、通常の公園施設あるいは公共施設が備えるべき防災機能を確保するという考え方は、明確になっていると考えられます。

また、県と市の役割分担やL1を超える費用負担のあり方については、基本計画の中で明らかにしていくものだと考えます。

完成時期については、知事は先般の本会議で「2020年までにできれば最良」とはしているものの、これはあくまでも目標であると捉えています。現実的には、集中審議でも説明を受けたように、通常の建設では最短でも5年程度かかるとみられており、これは相当困難なスケジュール設定であると考えるからです。

ただし、今回の修正案が可決されれば、場所の選定や都市計画決定手続き、野球場に導入する機能や、県と市の役割分担を検討する期間等を考えますと、2020年どころか相当な先送りになることは必至であり、老朽化が進む浜松市の四ツ池公園の再整備にも多大な影響が及ぶことにもなります。

また、修正案の提案理由および先ほどの議論の中で、「西部地域への野球場の整備がダメというつもりはない」と言われていますが、先日の集中審議で明らかになったように、浜松市内に県が野球場を造るとすれば、現時点では、その場所は都市計画公園として50年前に計画決定している篠原地区しかありません。

もし新たな候補地を探すとなれば、さらに完成時期が大幅に後退することは明らかで、それはつまり、これまで真摯に要望をされてきた浜松市および関係者の期待を大きく裏切るものであります。

私たちは、知事が浜松市の長年の要望に応え、今回の基本計画の策定予算9700万円を提案したことを評価します。

ただ、私たちは以下のように考えています。

1つ目として、一部関係者の間で合意が得られていないとすれば、県も市も速やかに合意形成に努力すべきだということ。

2つ目として、津波の越波の影響や液状化対策についても詳細な調査を行い、対策を考え、その上で基本計画の策定を検討し、仮に調査結果や対策を考えた時にこの場所が不適当ということであれば、そこではじめて次なる選択肢を探すということでよいのではないかということ。

3つ目として、完成時期については目標設定することは理解しますが、これまでにお話しした手続きに必要な時間や、建設資材や人件費の高まり、また厳しい財政事情などを考慮し、ここは柔軟に対応すべきということです。

以上の点を考慮しながら、原案に賛成の立場で、修正案に反対させていただきます。

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◆私の意見

○財政が厳しい折、野球場など不要という方もいらっしゃいます。

私は誰もが認める行財政改革推進論者です。行財政改革とは単にケチをすることではありません。「ムダをなくして必要なものに投資する」ことです。投資を一切やめてしまえば、将来の成長はなく、将来像を描くことはできません。

もちろん安全安心や福祉など優先すべき事業はたくさんあり、私も建設投資には厳しい見方をしていますが、県営スポーツ施設のバランスを見た時、東部のアリーナ(体育館)と西部の野球場が必要というのは、多くの議員の共通した考え方です。

行財政改革の手法はほかにもたくさんあります。それをしっかりやっていきます。

○また、現在の浜松市の四ツ池公園にある浜松球場は、遅かれ早かれ改修整備が必要になります。一般会計3000億円弱の浜松市が野球場を建設するよりも1兆2千億円を超える予算を持つ県が事業をやれば、浜松市の負担は軽くなり、県と市の全体最適を考えた時には効果的な連携事業になります。

県議の中には「政令市には県の投資は必要ない」という意見もあります。小さな市町からすれば、そういう考え方もありますが、県民税を納めている浜松市民のことを考え、県全体の投資バランスをとるべきです。

県西部の適地としては、他にエコパが考えられますが、県は市営野球場の配置と人口バランスを考え、浜松市の要望に応え天竜川以西への整備を考えました。浜松市民としては、県が事業着手してくれるに越したことはありません。

○一方、篠原の地理的な課題を指摘する声があります。

風や飛砂が野球に不適という意見やアクセスの問題、さらに液状化の懸念や津波浸水想定地域にあるということなどです。

これらの課題は、当然、真摯に受け止め、課題解決に向けて知恵を絞らねばなりません。そこには当然、県民市民との合意形成が必要です。しかし解決できない課題ではないと思います。

東日本大震災以来、本県の沿岸部は疲弊しています。それに対し県は「沿岸部のリノベーション」という考え方で沿岸部のまちづくりを進めています。

浜松市の沿岸域では防潮堤整備が進んでおり、これに合わせて野球場を整備することは、浜松市沿岸域に住む住民の大きな励みであり、地域活性化につながります。

なお浜松市が主体となって市営野球場を造る場合はどこでも可能ですが、現在、県が主体となって浜松市内に野球場を造るとすると、理屈としては都市計画公園である遠州灘海浜公園とガーデンパークしかありません。

その他の場所でも、浜松市が都市計画決定の手続きを経て、県に要望することは可能ですが、すでに県内には7つの都市計画公園があり、中でも50年前に計画決定したにもかかわらずいまだ未整備の篠原地区があるのに、新たな場所に野球場整備することは、なかなか困難と言わざるを得ません。

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減額修正案は17日の本会議で採決されます。

ただし篠原地区の野球場整備が「NO」になるわけではありません。

修正案審議の中、次の2点が確認されています。

・篠原地区を含め県西部に野球場を造ることは賛成

・合意形成のステップを踏み、補正予算が提案されれば議論に応じる

私は、“できない理由”を考えるのでなく、課題解決に汗をかき、浜松市沿岸域のリノベーションに資する施設として建設を進めるべきという考え方で、できることをやっていきます。