PFIによる県営住宅再整備と神山町の地方創生

Kamiyama

委員会視察2日目は徳島県。①PFIによる県営住宅再整備と②神山町の地方創生の取組を視察しました。

①徳島県は徳島市内にあった「12団地・36棟・645戸」を再整備し、「3団地・300戸+高齢者向け住宅60戸以上+各団地に福祉施設又は利便施設1事業以上」として、BOT方式によるPFI事業を行いました。

事業期間は平成25年3月から平成46年3月末まで。設計・建設に2-3年、維持管理運営業務20年としました。

入札には6グループが参加し、3団地・300戸のほか、サービス付き高齢者向け住宅を各団地に設置し、小規模多機能型居宅介護事業所や障がい者生活支援センターを提案した事業者が約55億円で落札しました(その後消費税引き上げやインフレスライドにより約58億円に変更)。

世帯数は入居者アンケートで設定したようですが、徳島市との調整はしていないとのこと。まちづくりの観点からも必要では…と思いました。

またPFIは金融知識が必要になり、技術系職員だけでは大変との声も。過日訪問した大阪府もそうでしたが、徳島県以降PFI事業は行われていません。ケースバイケースの試算が必要なようです。

②神山の奇跡として有名な「神山プロジェクト」を、中心となって進めている、NPO法人グリーンバレーの大南理事長からうかがいました。

かつて21000人いた町民は現在5700人。人口減少を正面から受け止める中、「数ではなく内容」と考え、若者、クリエイティブ人材の誘致を推進しています。

発想は、「評価の高いアートを購入し観光客を呼び込むにはおカネがない」ので、アーティストを受け入れることとし、フェーズ1「アイティスト・イン・レジデンス」に取り組み、ITインフラの整備と芸術家の移住を推進しました。

フェーズ2は「ワーク・イン・レジデンス」。これは「瓢箪から駒」のようなきっかけのようです。ICT利活用モデル事業で立ち上げたウエブサイトでアートのまちをPRしようとしたところ、移住(空き家情報)コーナーへのアクセスが多かったことから、潜在需要がわかったとのこと。

そこで、バックキャストで、町の将来のために必要な移住者(パン屋さんやデザイナーなど)を募集したとのこと。これにより商店街の再生を図っています。経済循環を考えて移住者を受け入れるところがすごいですね。

フェーズ3は「サテライトオフィス」。空き家を再生するプロジェクトを進める中、ITを活用したサテライトオフィスの需要があることがわかったとのこと。これは人×人のつながりから生まれたとのこと。移住には仕事が必要ですが、それをうまく生み出しました。

2010年からは人材育成事業の「神山塾」をスタート。これは求職者訓練で、視察時も10人ほどの若者を見かけました。中心はクリエーターを目指す若い女性で、訓練後は半数が移住し、サテライトオフィスへ就職する人もおり、さらにカップルが誕生することもあるとか。持続可能性につながっています。

中山間地域の活性化は「農林水産業」とストレートに考えがちですが、「地域内経済循環」ができれば、結果的に1次産業の需要が生まれるというモデルですね。移住者が増え雇用が生まれ、サービス産業(食)ができれば農産品が地産地消できるということです。

さらに外貨獲得のため都市部住民のインバウンドを進めているとのこと(私たちもまんまとその中に入ったわけですね…^^;)。

これからフェーズ4を迎えています。昨年策定した「神山町版総合戦略」では、人口減少を受け止め3200人まで減少する人口ビジョンをもとに検討。策定は町民・移住者によるワークショップを重ねたとのこと。その中でワークショップ参加者が「自分がやる」という意識を持つようになったということです。「誰かがやってくれる」ではダメ。これが原動力ですね。

ふと「幸運の女神には前髪しかない」、そんな言葉を思い出しました。

神山町の取り組みは、まさに先日、三田で聞いた「独立自尊 敢為活発」の実践といえます。