シナリオ・プランニング

最近、浜松地域イノベーション推進機構のイベントに参加する機会が増えています。技術的なことはよくわからないのですが、話を聞くたびに、時代の変化は「早くかつ大きい」と感じます。

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今日の講演会のテーマは「エネルギー問題の展望」。難しい課題ですが避けて通れないテーマです。結論はなかなか出せませんが、ヒントをいくつかいただきました。

講師は日揮(株)の元副社長さま。世界中のエネルギープラントを手がけたメーカーの技術畑トップの方から見たエネルギーの課題は、原発リスクや温暖化問題はいうまでもなく、経済や貿易収支、地政学的安全保障など多岐にわたっていました。

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エネルギー産業の売上規模を、世界全体を俯瞰してみると600兆円とダントツで、自動車、電力の200兆円、鉄鋼、セメントの100数十兆円を大きく超える産業とのこと。

世界の企業ランキングトップ10には常にエネルギー企業が名を連ねています。日本ではトヨタやVWなど自動車の名前が取り上げられがちですが、2013年においても6社がエネルギー企業でした。日本最大のエネルギー企業JX日鉱日石エネルギー(エネオス)の売上高は、世界から見ると20番目くらいの中小企業とのこと。

日本のエネルギー自給率が4%と低いのも、エネルギー産業が製造業に比べて小さく、低コストで調達できていたため、これまで明確なエネルギー政策がなかったからだ、とお話しされていました。

政府機関の扱いも、他国では「エネルギー省」の国もあるようですが、日本では「経済産業省資源エネルギー庁」と位置づけが低いようです。資源のない国で輸入依存度が高いゆえにそうなってしまったんでしょうね。

昨年の貿易収支が11兆円の赤字になりましたが、LNG(液化天然ガス)の輸入による影響が大きいと言います。LNG輸入額は8兆円。量の増大と価格の上昇のWパンチのようです。

LNGの輸入元はオーストラリア、インドネシア、マレーシアなどで、原油に比べて地政学的リスクは小さいようですが、原発が止まっている中、発電量に占める割合が40%と高くなっている割に、国内備蓄は15日分しかないとのこと。オイルショック後に備蓄を進めた原油が200日分あるのに比べ、体制は脆弱です。

大陸ではLNGパイプライン網が張り巡らされていますが、島国日本ではLNGタンカーでの調達だのみでコスト高になるということでした(ロシアからパイプラインの提案があると聞いたことがありますがどうなっているんでしょう・・・)。

原発のリスクと化石燃料による温暖化リスクはここでは触れませんが、どっちも大きな問題です。エネルギーのベストミックスと言うのは、言葉は簡単ですが、実際にはとても難しいことです。講師は、再生可能エネルギーは増えても10%程度ではないか・・・、といいます。

民主党政権の最終版で「革新的エネルギー・環境戦略」を議論しましたが、最終的に閣議決定には至りませんでした。新たな「エネルギー基本計画」が間もなく公表されるようですが、基幹的エネルギーをどうするのかは日本の将来の方向性を決める大きなテーマです。

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タイトルの「シナリオ・プランニング」は巨大エネルギー企業「ロイヤル・ダッチ・シェル」がとっている経営手法だそうです。

言葉の詳しい説明はネットで検索していただければと思います。

講師はシナリオを描くための要素をいくつか指摘していました。

・エネルギー資源(原油・石炭・ウランなど)は十分ある

・温暖化の進行具合、影響の確認

・温暖化メカニズムの解明と予測制度の向上

・北米のシェールガス、タイトオイルの開発は軌道に乗るか

・アメリカの影響力アップ(産業復権、中近東への関心の低下)

・エネルギー資源の売り急ぎ(石油価格暴落の可能性)

・中東の不安定化

・中国、インドの発展と民度の変化(G2=米中、G3米中印の枠組み)

・・・これらを考慮しながら日本のポジショニングを行うべきとしていました。

余談ですが、シェルのシナリオには「シェールガス」は入っていなかったようです。エネルギーを専門に扱う超巨大企業ですら、エネルギーの将来を予測するのは難しいと言うことです。

私たち素人はなおのこと、エネルギー政策においては、いくつかのシナリオを用意して、国民の判断材料とすることはできないものでしょうか。特に原発については決して都知事選挙の結果だけで判断すべき問題ではないと思います。

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